判例分析 / 法律最新情報

取締役報酬の判例変化が本格化、株主総会決議なしの支給時は返還リスク増大

取締役の報酬は、商法第388条により厳格な手続的統制を受ける領域であり、近年の判例の変化に伴い、株主総会決議、取締役会決議、議決権制限に至るまで、複合的な法的リスクが拡大しています。

決議手続を遵守しない報酬支給は、不当利得の返還および株主代表訴訟につながるおそれがあり、企業の事前点検が求められます。

1. 取締役報酬 | 法的構造と近年の判例動向

取締役の報酬は、会社のガバナンスと直接的に結びつく領域であり、商法と判例を通じて厳格に規律されています。

特に近年の判例は、報酬支給手続違反に対する責任を強化する方向で展開されており、企業の内部意思決定構造全般に影響を及ぼしています。

取締役報酬の法的根拠と強行規定性

大法院2020年4月9日宣告2018다290436判決

商法第388条は、取締役の報酬は定款にその額を定めていないときは株主総会の決議でこれを定めると規定する。これは、取締役が自身の報酬に関して個人的利益を図る弊害を防止し、会社と株主および会社債権者の利益を保護するための強行規定である。したがって、定款で取締役の報酬について株主総会の決議で定めると規定した場合、その金額・支給方法・支給時期等に関する株主総会の決議があったことを認める証拠がない限り、取締役は報酬請求権を行使することができない。この場合、‘取締役の報酬’には、月給、賞与金等の名称を問わず、取締役の職務遂行に対する報償として支給される対価がすべて含まれ、会社が成果給、特別成果給等の名称で経営成果に応じて支給する金員や、成果達成のための動機を付与する目的で支給する金員も同様である。

商法第388条は、“取締役の報酬は、定款にその額を定めていないときは株主総会の決議でこれを定める”と規定しています。


この規定は強行規定と解釈され、大法院2020年4月9日宣告2018다290436判決によれば、事後的な承認や内部合意のみでその瑕疵を治癒することは困難です。

このような強行規定性は、次のような目的から導かれます。

• 取締役による自己報酬決定の防止

• 会社資産の任意流出の防止

• 株主および債権者の利益保護

すなわち、取締役報酬は会社ガバナンスの統制装置として機能すると解釈できます。

取締役報酬の範囲

区分

含まれるか

判断基準

年俸

含まれる

基本報酬

手当

含まれる

職務関連の支給

賞与金

含まれる

成果連動

特別成果給

含まれる

職務の対価

退職金

含まれる

在職中の対価

取締役報酬は、名称に関係なく実質的に判断されます。

大法院2020年4月9日宣告2018다290436判決によれば、特別成果給も取締役の職務遂行に対する対価として支給される以上、報酬に該当すると判断しました。

また、大法院は、退職金も在職中の職務遂行の対価として支給される給与とみて、取締役報酬に含まれると一貫して判断しています。

近年の判例動向の核心的変化

近年の判例の流れを総合すると、取締役報酬の規律は次のような方向で変化しています。

• 報酬概念は実質基準で拡大が継続

• 手続違反に対する責任は強化

• 利害関係人の議決権制限範囲の拡大

特に大法院2025年4月24日宣告2025다210138判決によれば、取締役である株主は、報酬限度の決議においても特別利害関係人に該当し、議決権が制限されると判断されました。

これは、従来比較的緩和されていた報酬決議の構造に対し、より厳格な統制を適用したものと評価されます。

このような流れは、企業の報酬決定構造全般に影響を及ぼす方向へつながっています。

2. 取締役報酬 | 株主総会決議と取締役会決議の必要性

取締役報酬 | 株主総会決議と取締役会決議の必要性

取締役報酬は、株主総会決議を中心としつつ、一定の範囲で取締役会に委任することができます。

しかし、このような手続を満たさない場合、報酬支給の法的根拠自体が否定されるおそれがあります。

株主総会決議のない報酬支給に対する判断

取締役報酬は、原則として株主総会決議を通じて定められなければならず、これを経ていない場合、報酬請求権自体が否定されるおそれがあります。

大法院は、株主総会決議が存在するという点についての立証責任は取締役にあると判断しており(大法院2015年9月10日宣告2015다213308判決)、決議なく支給された報酬は不当利得の返還対象になるとみています(大法院2020年4月9日宣告2018다290436判決)。

このような判例の流れは、事後承認や内部合意のみで手続上の瑕疵を補完することは困難であるという方向で解釈されます。

報酬限度の承認構造と限界

実務では、株主総会で報酬総額のみを承認し、個別の報酬は取締役会に委任する構造が一般的です。

大法院は、このような構造自体は許容されるとしつつも、取締役会への委任は具体的な範囲内でのみ可能であり、包括的な委任は許容されないと判断しました。

取締役会決議の不在に対する近年の判断傾向

取締役会決議なく支給された取締役報酬について、下級審裁判所は、これを法的根拠のない支給とみて、不当利得の返還対象であると判断する傾向を示しています。

実際に、ソウル西部地方法院2021年11月4日宣告2020가단306634判決とソウル南部地方法院2022年12月15日宣告2022가단237856判決も、同じ趣旨から取締役会決議のない報酬支給を違法なものと判断しました。

このような判断を総合すると、次のような構造が導かれます。

状況

法的評価

株主総会の限度承認のみ存在

不十分

取締役会決議なし

支給根拠の否定

報酬支給完了

不当利得の返還

これは、実務上慣行的に行われてきた報酬支給の方式に相当な影響を及ぼすおそれがあります。

3. 取締役報酬 | 違法支給時に生じる法的責任

取締役報酬は、商法上求められる決議手続を満たしてこそ、支給の法的根拠が認められます。

このような手続を経ていない場合、当該報酬支給は民事上の責任につながるおそれがあります。

不当利得の返還責任

民法第741条によれば、法律上の原因なく利益を得た場合、その利益を返還しなければなりません。

取締役報酬の場合、株主総会または取締役会の決議がない状態で支給が行われると、その支給の法的根拠が認められないことになります。

この場合、当該報酬は法律上の原因のない給付と評価され、支給された金額は返還対象となります。

結局、取締役報酬の決議手続の瑕疵は、支給自体の根拠を否定する事由となり、すでに支給された金額全部に対する返還問題につながるおそれがあります。

議決権制限の拡大に伴う法的影響

取締役報酬の決議過程では、当該報酬と直接的な利害関係を有する株主の議決権が制限されることがあります。

近年では、このような議決権制限が、個別の報酬決定だけでなく、報酬限度のような基礎的な決議段階にも幅広く適用される方向で解釈が行われています。

• 報酬限度決議自体の効力に対する争いが生じる可能性

• 決議の瑕疵を理由とした報酬支給根拠の否定

• 従来の決議の有効性に対する再検討および紛争可能性の拡大


このような解釈は、報酬決議全般に対する統制水準を強化する結果につながり、上記のような法的影響をもたらすおそれがあります。

決議の瑕疵の法的効果

決議の過程で次のような瑕疵が存在する場合、当該決議は無効または取消しとなるおそれがあります。

• 特別利害関係人による議決権の行使

• 法定または定款上の定足数の未充足

• 手続上の重大な瑕疵の発生

このような決議の瑕疵がある場合、当該決議を根拠とした取締役報酬の支給は、正当な支給として認められにくくなります。

その結果、すでに支給された報酬も返還を求められるおそれがあります。

4. 取締役報酬 | 企業が点検すべき核心事項

取締役報酬 | 企業が点検すべき核心事項

取締役報酬に関する紛争を予防するためには、事前に報酬決定の構造と手続を点検することが必要です。

点検チェックリスト

点検項目

株主総会で報酬限度または基準が明確に設定されているか

取締役会決議を通じて個別の報酬が具体的に決定されているか

報酬算定基準および支給方式が内部的に文書化されているか

取締役である株主の議決権制限が適切に反映されているか

過去に支給された報酬のうち、手続的瑕疵が存在する可能性があるか

特に、報酬限度のみが設定された状態で実際の支給が慣行的に行われた場合、近年の基準により法的問題が生じる可能性があるため、事前の点検が求められます。

企業法務グループのサポート

法務法人大倫の企業専門弁護士は、報酬体系の点検、決議構造の整備、紛争対応戦略の策定など、全般的な法律相談を提供しています。

▶ 体系全般に対する法的リスクを分析し、株主総会および取締役会の決議構造の適法性の有無を点検

▶ 報酬限度の設定および個別報酬の決定過程で生じ得る手続的瑕疵を検討し、定款および内部規定の整備方策を提示

▶ すでに支給された取締役報酬の法的問題の有無を検討し、不当利得の返還範囲の算定および対応戦略を策定

▶ 株主代表訴訟等の紛争発生時に会社および役員の責任範囲を分析し、段階別の訴訟対応方策を提示

▶ 議決権制限、決議の有効性など、ガバナンス関連の争点を検討し、今後の紛争予防のための内部統制方策を策定

取締役報酬に関して手続的瑕疵や紛争発生の可能性が懸念される場合は 🔗企業専門弁護士との相談を通じて、事前の点検および対応戦略をご準備ください。

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