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企業投資誘致 | 投資交渉の関与者は「上場会社の代理人」に該当し未公開情報の伝達責任を負い得るとした大法院判決
企業投資誘致に関する本件は、上場会社が海外(中国)資本の投資・経営権買収の交渉を進める過程で、交渉に実質的に関与した外部者が資本市場法上の「上場法人の代理人」に該当するか、そしてその者が投資誘致に関する未公開重要情報を知人に伝えて株式取引に利用させたかが争点となりました。
大法院は、「代理人」は民法上の代理権保有者に限定されず、会社業務の委任・委託を受けて事実上遂行した場合にも含まれ得ると判断し、原審の無罪判断を破棄差戻ししました。(大法院 2025. 12. 4. 宣告 2021도11654 判決)
1. 企業投資誘致 | 事件の概要
企業投資誘致の過程で発生した本件は、上場会社が海外資本の投資および経営権買収の交渉を進めるにあたり実質的に関与した外部者が資本市場法上の「上場法人の代理人」に該当するか、そしてその者が投資誘致に関する未公開重要情報を知人に伝えて株式取引に利用させた行為が処罰対象となるかが争点となりました。
大法院は、代理人の範囲を民法上の形式的な代理権保有者に限定することはできないと判断し、原審の無罪判断を破棄差戻ししました。
事件の経緯
被告人はコスダック上場会社(公訴外1会社)の大量の持分を保有した状態で、代表取締役の要請を受けて中国資本の投資者・買収者の物色および交渉の折衝に関与しました。
その過程で第三者割当有償増資および筆頭株主の変更を伴う投資契約が進行している事実を知り、同好会の知人らにその情報を伝えて株式の買い付けを誘導したという容疑で起訴されました。
被告人の知人らは、開示前の短期間に集中的に買い付けたのち、開示直後の株価急騰局面で売却し、多額の差益を実現しました。
資本市場と金融投資業に関する法律 第174条(未公開重要情報利用行為の禁止)
以下この項および第443条第1項第1号において同じ〕の業務等に関連する未公開重要情報(投資者の投資判断に重大な影響を及ぼし得る情報であって、大統領令で定める方法により不特定多数の者が知り得るように公開される前のものをいう。以下この項において同じ)を、特定証券等(上場予定法人等が発行した当該特定証券等を含む。以下第443条第1項第1号において同じ)の売買その他の取引に利用し、または他人に利用させてはならない。
1. その法人(その系列会社を含む。以下この号および第2号において同じ)およびその法人の役職員・代理人であって、その職務に関連して未公開重要情報を知った者
原審の判断
原審(ソウル高等法院)は、被告人の容疑について無罪判決を下しました。要旨は次のとおりです。
仮に代理人であるとしても、被告人が知人らに未公開重要情報を利用させたと断定することは難しい。
2. 企業投資誘致 | 大法院の判断
企業投資誘致の過程で発生した事件について、大法院は次のとおり判断しました。
「上場法人の代理人」は民法上の代理人に限定されない
大法院は、資本市場法第174条(未公開重要情報利用行為の禁止)の立法趣旨(投資者保護・市場の公正性)を強調しつつ、代理人の範囲を狭く解釈すると規制の空白が生じるとみました。
大法院の判断の核心は次のとおりです。
- 代理人か否かの判断にあたっては、形式・肩書・名称ではなく実質が重要である
- 会社の業務について委任・委託を受け、会社の意思で業務を代わって遂行したのであれば代理人に該当し得る
- 契約条件についての助言、交渉への関与、交渉過程の共有・意見交換への参加、ミーティング日程の調整など、事実上会社の業務を遂行したのであれば「代理人」とみることができる
すなわち、「法律上の代理権がないから代理人ではない」という原審の前提は受け入れがたいという趣旨です。
投資誘致情報は「未公開重要情報」とみる余地がある
大法院は、「最終的な条件が確定する前の情報は重要情報ではない」と断定することはできないとみました。
内部の意思決定手続が終了していなくても、合理的な投資者が現実化の可能性と重要性を評価して投資判断に反映する程度に具体化されれば、未公開重要情報と認められ得るという法理を再確認しました。
本件の情報は、有償増資と筆頭株主の変更という構造であり、通常、株価に重大な影響を及ぼし得る情報に該当する点を強調しました。
知人らの買い付けパターンは情報利用の可能性を強く裏付ける
大法院は、被告人から関連情報を聞いた知人らの取引態様が「偶然の投資」とみることは難しい点を具体的に指摘しました。
- 開示直前の約20日間に集中的に買い付け
- 余裕資金ではなく融資・借入などのレバレッジを動員
- 開示後の短期間に全量売却し多額の差益を実現
- 従来の投資傾向と異なる急激な買い付けパターン、買い付け理由の不明確さ
これらの事情を総合すると、被告人の情報提供による当該情報の利用可能性を排除することは難しく、原審の無罪判断は早計であるという趣旨で破棄差戻ししました。
3. 企業投資誘致 | 未公開重要情報の例

資本市場法上の「未公開重要情報」とは、上場法人の経営・財産状態・営業実績などに関する内部情報であって、合理的な投資者の投資判断に重大な影響を及ぼし得るものであり、かつまだ開示されていない情報を意味します。
実務上問題となる代表的な例は次のとおりです。
- 第三者割当有償増資、大規模な投資誘致、経営権の買収・売却交渉の進行事実
- 筆頭株主の変更予定の事実
- 大規模な受注契約の締結または解約予定の事実
- 大規模な損失の発生、会計不正、上場廃止事由の発生の可能性
- 新薬の承認、中核技術の特許取得、政府の認許可承認予定の事実
- リストラ、合併・分割、子会社の売却計画
特に企業投資誘致の交渉情報は、資金調達の構造、支配構造の変化、企業価値の上昇期待に直結するため、株価に重大な影響を及ぼす重要情報として評価されます。
本判決もまた、「投資条件が最終的に確定していなくても、現実化の可能性が相当程度あり具体化された状態であれば重要情報となり得る」という点を再確認した点に意義があります。
未公開重要情報の利用行為
未公開重要情報の利用行為は、「直接株式を買い付ける行為」だけに限定されません。
資本市場法第174条は次のような行為を禁止しています。
② 他人に情報を伝達し、その者に株式等を売買させる行為
③ 情報を知りながらこれを利用できるように黙認・幇助する行為
実務でしばしば問題となる類型は次のとおりです。
- 投資誘致の交渉参加者が知人に「まもなく大きな契約がある」と示唆
- 会社の役員が家族名義の口座で開示前に買い付け
- 外部の顧問役が交渉情報を共有しながら買い付けを勧誘
- 重要情報の受領者がSNS・グループチャットなどを通じて再伝達
- 借名口座・法人口座を活用した迂回買い付け
本件で問題となった行為もまた、企業投資誘致の交渉に関与した者が同好会の知人らに情報を伝達し、彼らが開示直前に集中的に買い付けたのち開示直後に売却した構造でした。
大法院は、直接的な「買え・売れ」という指示がなくても、情報の生成時点、伝達の状況、取引パターン、資金調達の方法などを総合して情報利用の可能性を判断できるとみました。
4. 企業投資誘致 | 実務のポイント
未公開重要情報の利用行為の場合、次のような不利益が伴い得ます。
資本市場と金融投資業に関する法律 第175条(未公開重要情報利用行為の賠償責任)
資本市場と金融投資業に関する法律 第429条の2(不公正取引行為等に対する課徴金)
2. 第174条に違反して未公開重要情報の利用行為をした者
資本市場と金融投資業に関する法律 第443条(罰則)
1. 第174条第1項に違反して上場法人の業務等に関連する未公開重要情報を特定証券等の売買その他の取引に利用し、または他人に利用させた者
したがって、企業投資誘致の際には次の事項に留意することが重要です。
区分 | 企業投資誘致の実務で問題となる点 | リスク |
交渉関与者の範囲 | 外部の顧問・知人・株主・ブローカーであっても実質的に関与すれば「代理人」と評価され得る | インサイダー取引規制の適用拡大 |
情報の時点 | 最終確定前であっても具体化されれば重要情報が成立し得る | 「確定前だったので知らなかった」という抗弁の限界 |
伝達の形態 | 直接の勧誘でなくても伝達の状況+取引パターンにより認定され得る | 状況証拠でも有罪の可能性 |
取引態様 | 開示直前の集中的な買い付け、レバレッジ、開示後の急売却 | 情報利用の推定強化 |
法務法人大倫のサポート
当法人に企業投資誘致の事前アドバイスを求めると、企業専門弁護士、金融専門弁護士が協業して未公開情報の管理体制(アクセス権限・記録化・コミュニケーションルール)を設計し、インサイダー取引リスクを事前に遮断します。
また、投資者・ブローカー・顧問役などの外部協力者が関与する場合にも「代理人」と評価される可能性を前提として、教育・誓約・取引制限の仕組みを整え、紛争と捜査を予防します。
すでに問題が発生した場合には、刑事専門弁護士、証拠調査センターとの協業により、取引履歴・連絡経路・情報の生成時点などを中心に事実関係を再構成し、捜査対応および刑事裁判の防御戦略を体系的に支援することができます。
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