CONTENTS
- 1. 米国連邦最高裁判所によるトランプ関税の違法・無効判決の事件概要

- - 主要な争点
- 2. 米国連邦最高裁判所の判断

- - 「税金を課す権限」は原則として議会にのみある
- - 「輸入を規制する」という文言だけで関税権限が生じるわけではない
- - 結論:国際緊急経済権限法を根拠とする関税は違法・無効
- - 反対意見の核心的な趣旨
- 3. 関税の違法・無効判決直後の米国行政府の対応

- - 判決の影響と範囲
- - 還付に関するポイント
- - 段階別の対応
1. 米国連邦最高裁判所によるトランプ関税の違法・無効判決の事件概要

米国連邦最高裁判所は2026年2月20日(現地時間)、米国行政府が国際緊急経済権限法を根拠に課した広範な関税について、憲法および法律上の根拠が不足しており違法であるため無効であると判断しました。
今回の判断は、米国行政府が2025年からフェンタニル密輸への対応などを理由に課してきたカナダ・メキシコ・中国産の輸入品に対する関税、および2025年4月3日に初めて発表された後に複数回修正された相互関税の適法性をめぐる事件において下されました。
多数意見はジョン・ロバーツ長官が執筆し、6名がこれに同意しました。反対に3名は別途の反対意見を出しました。
主要な争点
今回の事件の核心は単純でした。
国際緊急経済権限法に「輸入を規制することができる」という文言があるからといって、大統領が関税を課す権限まで有すると見ることができるかが争点でした。
2. 米国連邦最高裁判所の判断
米国連邦最高裁判所判決の多数意見の要旨は次のとおりでした。
「税金を課す権限」は原則として議会にのみある
連邦最高裁判所は 米国憲法の体系上、税金を課す権限(課税権)は原則として議会にのみ与えられた権限であると見ました。
したがって、大統領や行政府が税金を課すには、議会が法律で明確にその権限を委任しなければならないという立場です。
「輸入を規制する」という文言だけで関税権限が生じるわけではない
問題の法条項は大統領に「輸入を規制することができる」という趣旨の権限を付与しているにすぎませんが、連邦最高裁判所は この文言を関税賦課まで含む意味に拡大解釈することはできないと判断しました。
つまり、関税は結局のところ輸入品に課される税金であり、税金を課す権限は憲法上議会に専属しており、国際緊急経済権限法には大統領に関税を賦課できるようにする明示的な委任規定がないという理由で、行政府はその法律を根拠に関税を賦課することはできないと結論づけました。
結論:国際緊急経済権限法を根拠とする関税は違法・無効
したがって、連邦最高裁判所は米国行政府が国際緊急経済権限法に基づいて課したカナダ・メキシコ・中国産の輸入品に対する関税、および全世界を対象とした相互関税のすべてが権限を超えた違法な措置であるため無効であると判断しました。
一方、2件の事件のうち1件は管轄のない裁判所で提起されたため、連邦最高裁判所はその事件については原審を破棄し、訴訟自体を却下すべきであると判断しました。
反対意見の核心的な趣旨
反対意見を出した裁判官らは、外交・通商の分野で行政府の裁量を制限する法理をそのまま適用することは難しく、大統領に「輸入を制限・調整できる権限」があるのであれば、それより弱い措置である関税賦課も可能と見る余地があると述べました。
また、多数意見のとおりであれば、すでに徴収した関税を返還する過程で大きな混乱が生じ得るという趣旨で懸念を示しました。
3. 関税の違法・無効判決直後の米国行政府の対応
判決が出た直後、トランプ大統領は記者会見を開き、すでに徴収した相互関税を自発的に還付しない可能性を示唆しました。
同時に、米国行政府は貿易法第122条を根拠に、2026年2月24日0時1分(米国東部時間)から全世界の輸入品に対して臨時で10%の追加関税を賦課すると発表し、翌日にはこれを法律が許容する最高水準である15%に引き上げると訂正しました。
また、本判決後も関税政策は法的根拠を変えながら引き続き維持されるとし、今後数か月以内に新たな関税体系を導入するという立場も明確にし、既に締結された貿易協定もそのまま有効であると明らかにしました。
ただし、貿易法第122条に基づく15%の関税は、議会の承認がなければ発効日から150日間のみ有効であるという限界があるため、その前に別の法的根拠で関税を継続する可能性が高いです。
この過程で、米国通商代表部に不公正貿易の調査を進めるよう指示することもありました。
判決の影響と範囲
今回の判決の意味は、米国行政府が通商交渉で有用に使ってきた国際緊急経済権限法に基づく関税というカードを、もはや同じ方法では使いにくくなったという点にあります。
ただし、今回の判決が扱った範囲は、あくまでも「国際緊急経済権限法を根拠に関税を賦課できるか」に限定されます。
したがって、この判決によって無効となるのは国際緊急経済権限法に基づく関税であり、他の法律を根拠に賦課された、あるいは今後賦課される関税までが自動的に影響を受けるわけではないということです。
還付に関するポイント
連邦最高裁判所は、すでに徴収された関税をどのように還付するかについては別途判断しませんでした。
したがって、関税をすでに納付した輸入者は、まだ輸入申告が確定していなければ事後の訂正手続きを、輸入申告が確定していれば確定日から180日以内に異議申立てを通じて不服手続きを進めることができます。
しかし、米国当局が別途の迅速な還付手続きを設けない限り、多くの申請を処理するには長い時間がかかると見られます。
段階別の対応

輸出入企業は、関税還付が取引条件によって誰に帰属するか(例:輸入申告の主体、関税負担および事後精算の特約など)が変わり得るため、次の段階に沿って点検を進める必要があります。
- 2026年2月6日以降に米国関税当局の還付を受けるには、電子還付口座の登録が必要
- 国際緊急経済権限法に基づく関税が実際に賦課・納付された輸入案件を識別し、通関関連書類を準備
- 輸入申告が確定しているか否かを確認し、確定の前後に応じた手続き(訂正または異議申立て)を検討
- 臨時関税、追加の品目関税、不公正貿易調査に伴う関税など後続のリスクと還付の実益を併せて考慮し、時期・戦略を調整
また、関税の引き上げ分が流通の過程で価格に転嫁された場合、消費者などから返金の要求が生じることがあり、その場合、還付利益の帰属や事後精算の問題が契約関係によって変わり得ます。
今後どのような法的根拠でどのような関税が追加されるか不確実性が大きいため、動向を継続的にモニタリングしながら、関税負担の分担方式などを契約条件に反映することが望ましいです。
当法人は、関税士の資格を保有する関税専門委員が、国際通商弁護士、米国現地のローファームSJKPと協業し、依頼者企業に必要な助言を提供しています。
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