CONTENTS
- 1. 少数株主 | 事件の概要

- - 原審の判断
- 2. 少数株主 | 大法院の判断

- - 代表取締役・取締役の監視義務違反の判断
- - 大法院が示した監視義務の判断基準
- 3. 少数株主 | 適用範囲および違法成立の構造

- - 損害賠償範囲・相当因果関係の法理
- 4. 少数株主 | 判決の示唆点

- - 大倫のサポート
1. 少数株主 | 事件の概要
少数株主とは、会社の発行済株式総数のうち一定比率以下の株式を保有しているものの、商法が定める要件を満たす場合には株主代表訴訟などによって取締役の責任を追及することができる株主をいいます。
本件の原告らは、訴外会社の株式を1万分の1以上、合計33,676株を6か月以上保有する少数株主で、会社が役員の責任追及訴訟を提起しなかったため、商法に従って株主代表訴訟(損害賠償請求)を提起しました。
商法第403条(株主の代表訴訟) ①発行済株式総数の100分の1以上に該当する株式を有する株主は、会社に対して取締役の責任を追及する訴えの提起を請求することができる。
争点は役員らが故意・過失により法令または定款に違反し、あるいは任務を怠って会社に損害を発生させたか、そしてその損害がどの範囲まで賠償の対象となるかでした。
原審の判断
原審は、本件について次のように判断しました。
代表取締役(被告2)については、CR部門の簿外資金の造成および政治資金の送金が代表取締役または取締役会に報告されたことがなく、代表取締役が違法を疑うべき特別な事由があったとは認めがたいため、監視義務違反の責任を認めることは難しいと判断しました。
また、取締役(被告13)については、直接の送金およびその後一定期間の監視義務違反を一部認めながらも、返還・弁済などにより損害が填補された、あるいは米国の制裁金との因果関係を否定するという方法で、損害賠償責任の範囲を制限しました。
2. 少数株主 | 大法院の判断

大法院は、原審判決のうち、被告2に対する簿外資金の造成・政治資金の送金に関する損害賠償請求部分、および被告13に対する部分を破棄し、差し戻しました。
すなわち、役員らの監視義務違反の有無と損害賠償範囲について、追加の審理・判断が必要であるという趣旨です。
代表取締役・取締役の監視義務違反の判断
大法院は、取締役が故意・過失により法令・定款違反または任務懈怠をすれば会社に連帯責任を負い、代表取締役は全社的な監視義務を負うという前提を確認したうえで、大規模・分業化された組織であっても監視義務は免除されないと判示しました。
続いて、核心は合理的な情報・報告システムと内部統制システムの構築・作動の有無であると整理しました。
特に本件では、次の事情を総合すると、被告2(代表取締役)および被告13(取締役)が在任期間中に簿外資金の造成・政治資金の送金に関する監視義務を怠った余地が大きいとみました。
結局、大法院は、代表取締役および取締役の監視義務違反の期間を原審のように狭く限定することは難しく、内部統制システムが実際に構築・運営されていたかをさらに審理すべきであると判断しました。
大法院が示した監視義務の判断基準
大法院は、監視義務の判断基準について次のように判示しました。
- 分業化・専門化=監視義務の免除ではない
大規模な会社であっても監視義務は基本的な義務であるため、責任がなくなることはない
- 核心は内部統制システムの「実効性」
文書上の制度の存在だけでは不十分であり、違反の兆候の探知・報告・是正が可能な形で作動していたか否かが決め手となる
- 高リスク領域ではより厳格な監視が求められる
簿外資金、対官庁・政治資金など法的リスクが高い領域で放置があった場合、責任の判断が強化されることがある
3. 少数株主 | 適用範囲および違法成立の構造
本件は、少数株主が会社の損害を理由に役員の責任を追及する構造でした。
- 行為要件:法令・定款違反または任務懈怠(善管注意・監視義務違反を含む)
- 損害要件:会社に損害の発生
- 因果関係:上記の義務違反と損害との間の相当因果関係
大法院は、特に「代表取締役・取締役が知らなかった」という主張だけで片付けるのではなく、内部統制の構築・点検・運営義務を実質的に履行したかを基準に監視義務違反を判断すべきであるとみました。
損害賠償範囲・相当因果関係の法理
大法院は、被告13に対する損害賠償範囲の判断に関して、原審が損害を政治資金の送金額中心にのみ限定し、米国の制裁金についても因果関係を安易に否定したことは首肯しがたいとみました。
核心は次のとおりです。
- 損害は「政治資金の送金額」のみに限定されない
簿外資金のうち政治資金として送金された金は一部にすぎない
残りの金額も、会社の資金が異常に流出・使用されたものであれば損害と評価されうる(返還・填補は控除可能)
- 米国の制裁金(追徴金・課徴金)も因果関係が排除されない
制裁の原因に簿外資金の造成行為が含まれている場合、簿外資金の造成を可能にした役員の義務違反と制裁金の納付による損害との間の因果関係を原則として否定しがたい
ただし、他の原因が競合する場合が多く、損害額の特定が難しいことがあるため、その部分を追加で審理すべきである
すなわち、大法院は「因果関係がない」と断定するのではなく、どの範囲までが因果関係のある損害であるかを審理して範囲を定めるべきであるという方向を示しました。
4. 少数株主 | 判決の示唆点

大倫の企業専門弁護士が見た本件の示唆点は次のとおりです。
- 少数株主による株主代表訴訟の実効性の強化
少数株主が会社に代わって役員の責任を問う事件において、大法院は、内部統制と監視義務を形式的にとらえるのではなく、実質的な作動の有無を基準に判断すべきであるという点を明確にしました。
- 対官庁・政治資金・簿外資金は「高リスク領域」
簿外資金の造成は、長期間・大規模に進行するほど違法な目的に使用される誘因が大きく、代表取締役・取締役の監視義務の判断において厳格な基準が適用されうることを示しています。
- 損害の範囲は「送金額」に限定されないことがある
簿外資金の造成そのものが会社の資金管理・法令遵守体制を毀損した結果であれば、政治資金の送金額のほかにも損害が問題となりえます。
さらに、海外の規制機関による制裁金までも因果関係の審理対象となりうるという点が、実務上重要です。
大倫のサポート
少数株主が株主代表訴訟を通じて役員の責任を追及する事件では、単に違法行為を列挙する方法では不十分であり、(1) 内部統制の失敗構造、(2) 監視義務違反の時点・範囲、(3) 損害および因果関係の特定を法理に沿って構成する必要があります。
法務法人大倫は、企業統治・商法紛争の経験をもとに、取締役会・代表取締役・業務担当取締役の監視義務違反の構造を事件ごとに再構成します。
また、内部統制システムの実効性の有無を中心に証拠の収集・整理の方向を設計しているだけでなく、簿外資金・制裁金・返還・弁済の関係まで含めて、損害の範囲と因果関係を立証可能な形で整理する戦略を並行します。
少数株主の権利行使は、責任の構造と損害の構造をどれだけ精密に証明するかによって成否が分かれます。
関連する紛争が予想される場合、あるいはすでに手続きが進行中である場合は、初期段階から法的な診断と対応戦略を立ててみてください。










