CONTENTS
- 1. 労災損害賠償 | 民事上請求が可能な事案

- - 労災損害賠償の範囲
- - 労災損害賠償 | 事業主の対応方法
- 2. 労災損害賠償 | 請求が可能な要件

- - 労災損害賠償に関する主要業務分野
- - 労災損害賠償の請求理由
- - 労災保険の療養給付などとの関係
- 3. 労災損害賠償 | 損害賠償訴訟の手続

- - 労災損害賠償の項目
- - 控除後過失相殺に関する大法院判決
- 4. 労災損害賠償 | 被告(事業主)側の防御戦略

- - 証拠資料の項目別の整理
- 5. 労災損害賠償 | 責任の認定・合意時の留意事項

- - 事業主の労災事故予防チェックリスト
1. 労災損害賠償 | 民事上請求が可能な事案
労災損害賠償とは、労働者が事業主の故意・過失により業務上の事故や疾病による被害を受けた場合に、それに伴う損害賠償請求訴訟を提起することを意味する。
事業場で労働者に労災の被害が発生した場合、基本的には勤労福祉公団を通じて労災保険で補償を受けることになる。
しかし、これは民法上の損害賠償責任とは別個のものである。
すなわち、労災保険で治療費・休業給付などを受領していても、事業主が安全措置義務を怠った場合には、民法上の不法行為責任を基準として別途の損害賠償を請求することができる。
労災保険は無過失補償を原則とするが、民事上請求する労災損害賠償は、事業主の過失が認められることを要する。

労災損害賠償の範囲
労災損害賠償の賠償額算定の範囲は、労災補償保険法に基づく保険給付の有無によって異なります。
労働者が同一の業務上災害について産業災害補償保険給付を受け取った場合、事業主はその金額の限度内で損害賠償責任が免除されます。
また、労働者が同一の業務上災害について損害賠償額をすでに事業主から支給された場合、勤労福祉公団は損害賠償額を除いた残りの金額を計算した金額の限度内で産業災害補償保険給付を支給します。
したがって、 労働者が産業災害補償保険給付を先に受け取って事業主に対し損害賠償の訴えを提起する場合、労働者が保険金を受け取った分だけ損害賠償の算定額が減ることになります。
だからといって、損害賠償を先に請求するのが正しい順序というわけではありません。
逆にしても、損害賠償額を受け取った分だけ保険金が減るためです。
したがって、 労災損害賠償の請求は、予測される損害額からすでに受け取った保険金を控除した後、残った損害額を計算し、訴訟の実益があるかどうかを判断した上で進めるべきです。
これについての判断は、法律専門家の助力を得ることをお勧めします。
労災損害賠償 | 事業主の対応方法
労災損害賠償請求に備えるために、事業主は徹底した対備策を準備しなければなりません。
① 予防措置および定期点検
最も基本的な労災損害賠償防御戦略は、労災発生を予防することです。
事業場の安全管理システムを強化し、予防措置を徹底的に施行することが望ましいです。
また、安全規則を定期的に点検し、労働者たちに産業安全教育を提供して事故発生の可能性を減らさなければなりません。
あわせて、作業環境の危険要素を事前に把握して改善し、事故発生を予防することも重要です。
② 労働者の過失の有無の検討
もし産業災害が発生した場合、事業主は労働者の過失の有無を綿密に検討しなければなりません。
事故が業務遂行中に発生したものであるか、労働者の不注意や故意性が介入していないかを判断するため、関連する証拠資料を確保することが重要です。
事故当時のCCTV映像、目撃者の供述、安全規則の遵守の有無などについての資料を徹底的に分析し、防御戦略を立てなければなりません。
③ 労災保険の積極的活用
事業主は労災保険を積極的に活用して、合理的な補償方案を検討しなければなりません。
労災保険は労働者の治療費と休業給与などを保障する制度であるため、これを適切に活用すれば事業主の負担を減らすことができます。
労働者が追加的な民事上の損害賠償を請求する場合にも、労災保険を通じた補償がなされたことを立証すれば、一部の請求を防御するのに役立つ可能性があります。
④ 訴訟防御戦略の樹立
労災が発生した場合、労災損害賠償など法的紛争が発生する可能性に備えて、専門家の助言を受けて訴訟戦略を樹立することが重要です。
労働法および産業安全法、重大災害処罰法に精通した弁護士と協力して、事業主の立場を効果的に弁護することができるよう対応戦略を立てる必要があります。
これを通じて不必要な法的紛争を回避し、事業主が効果的な解決策を準備することができるようにする必要があります。
2. 労災損害賠償 | 請求が可能な要件

労働者は、労災保険金を受け取った後にも、次の要件を満たせば事業主に追加で損害賠償を請求することができる。
1) 事業主の故意または重大な過失
事業主の故意、重大な過失によって労災が発生したことを立証する必要がある。
例えば、作業場の安全施設の不備、教育を実施しないままの危険作業の指示、保護装備の未支給などが代表的である。
2) 請求権の消滅時効の確認
損害賠償請求は民事訴訟として進行し、通常、事故発生日から3年以内、不法行為を知った日から10年以内に請求する必要がある。
労災損害賠償に関する主要業務分野
労災損害賠償に関する主要業務分野は以下のとおりです。
労災損害賠償訴訟の提起可能性の確認および勝訴可能性に関する法律相談
労災損害賠償額の算定方式に関する助言および検討
労災損害賠償の積極的損害の検討および算定
労災損害賠償の消極的損害の検討および算定
労災損害賠償の慰謝料算定および関連資料
労災損害賠償に関する判例および事例の検討
労災損害賠償の慰謝料認定事例
労災損害賠償の遺族請求の可否
労災損害賠償に関する資料確保業務の代行
労災損害賠償の相手方特定および訴状作成
労災損害賠償の集団訴訟の進行
労災損害賠償の共同被告の設定および訴状送達の可否の把握
労災損害賠償の請求趣旨および請求原因の変更の進行
労災損害賠償の相手方答弁書の内容確認および反論弁論の準備
労災損害賠償の調停手続きの進行および調停案の内容検討
労災損害賠償の判決宣告後の強制執行手続きの確認
仮処分申請の進行の可否の検討および法律相談
労災損害賠償訴訟の反論書面の提出および全般的な手続き対応の進行
事業主の印章代理による弁論の進行
労災損害賠償の請求理由
労災損害賠償を請求すべき理由は、 労災保険の保険金算定方式と民事訴訟の損害賠償額算定方式が大きく異なるためです。
労災保険の保険給付を受け取った後、残りの損害額を計算してみて、訴訟の実益があるか否かを具体的に弁護士と相談した上で把握するのが最もよいでしょう。
労災保険は労働者の業務上災害を迅速かつ公正に補償することを目的としているため、不十分な補償がなされていると思われる場合があります。
ただし、 労災損害賠償の算定においては被災者の過失を反映するため、事実関係の把握において過失の範囲が大きい場合には損害賠償の算定額が縮小される可能性があるので、これに注意する必要があります。
労働者の年齢が若いほど労災保険給付と労災損害賠償額の差が大きくなる可能性があるため、具体的な事案については必ず弁護士と相談した上で進めるかどうかを検討するのが望ましい方法です。
労災保険の療養給付などとの関係
ただし、受給権者(被害者)が同一の事由により労災保険給付を受けた場合、事業主はその金額の限度内で受給権者に対する損害賠償責任が免除される。
したがって、被害者側が産業災害補償の保険給付を先に受け取ったうえで事業主に損害賠償を求める場合、事業主の立場ではその分だけ損害賠償額が減ることになる。
また、民事上の損害賠償は一時払いが原則であるため、被害者側が障害補償年金または遺族補償年金を受けた場合には、障害補償一時金や遺族補償一時金を受けたものとみなし、年金額を一時金に換算した金額を損害賠償額から控除する。
3. 労災損害賠償 | 損害賠償訴訟の手続

労働者が損害賠償請求を望む場合、事業主を相手方として民事訴訟を提起する。
| 被害労働者側の提訴 → 訴状の送達 → 事業主側の答弁書の提出 → 弁論および証拠調べ → 判決の宣告 → 控訴などの不服申立て → 確定 |
この場合、事業主は次の点に留意する必要がある。
事業主は、訴状を受け取ったら事実関係の確認、証拠の収集を直ちに開始する必要がある。
事業主も現場の記録を保管し、必要であれば専門家の鑑定などを通じて反論できるよう準備する必要がある。
労災損害賠償の項目
労災損害賠償は、保険で充当されない実質的な損害を賠償することに目的がある。不法行為に対する損害賠償の項目は、次のように定義することができる。
積極的損害(治療費、介護費、補助具代)
-労災療養前の自費治療の費用、療養給付を除く治療費
-将来の治療費
-補助具代
-介護費
[療養の範囲]
- 診察
- 薬剤、診療材料の支給
- 義肢、補助器の支給
- 処置、手術、その他の治療
- 入院および看病
- 移送費
消極的損害(逸失利益、逸失退職金)
-治療期間の予想収入額の全額
-治療終了後の労働能力喪失率に相応する金額
-定年まで勤務できず早期退職することになって被る退職金の損失
精神的損害(慰謝料)
-被害労働者本人または遺族の精神的苦痛
-災害の程度、過失の程度、被害者の年齢や職業などを総合的に考慮して算定
過失相殺・損益相殺
-労働者の過失割合に応じて計算される過失相殺
-休業給付、障害給付、遺族補償給付、葬祭費などは控除
控除後過失相殺に関する大法院判決
2025.6.26.宣告2023다297141判決
産業災害に遭った労働者が、労災保険金の支給を受けた後、労災保険金では填補されない逸失利益の損害額があると主張し、事業主を相手方として残余の損害額の賠償を請求した事案である。
原審は、過失相殺後控除の方式により、被災労働者側の過失(30%)を先に相殺したうえで既払いの障害給付を控除する場合、残る逸失利益の損害額はないと判断した。
しかし、大法院は、労災保険の社会保障的な性格、被災労働者と公団および不法行為者との間の利益衡量を考慮し、当該事案には‘控除後過失相殺’の方式を適用すべきであると判断し、原審を破棄差戻しした。
控除後過失相殺とは、損害額からまず労災保険金を差し引いたうえで、残った金額に過失割合を乗じる方式である。
4. 労災損害賠償 | 被告(事業主)側の防御戦略
労災損害賠償において、事業主がその請求を棄却させ、または責任を減らして減額するためには、次のような証拠資料を速やかに収集する必要がある。
証拠資料の項目別の整理
証拠項目 | 具体的な証拠資料 |
1. 安全保健措置義務の履行資料 | - 定期的な安全・保健教育の日誌および参加者の署名簿 - 保護装備(安全帽、安全靴など)の支給台帳および署名簿 - 危険性評価報告書および現場点検チェックリスト - 作業手順書、安全マニュアル、緊急対応マニュアル |
2. 事故の直前・直後の状況資料 | - 事故現場のCCTV映像および事故前後の写真 - 事故当日の作業指示書および作業日誌 - 安全遵守事項違反の摘発記録 - 目撃者の陳述書、被害労働者の飲酒の有無の確認資料 |
3. 事故後の対応資料 | - 産業災害調査表の提出記録 - 勤労福祉公団への報告資料 - 事故後の現場改善措置報告書 - 遺族・労働者との対話記録(文書/録音) |
4. 損益相殺・過失相殺資料 | - 労災保険金の支給決定明細書(休業給付、障害給付など) - 平均賃金の算出資料 - 労働者の過去の労災記録(類似の過失) |
5. 外部機関の確認資料 | - 安全管理者・産業保健医の点検報告書 - 産業安全コンサルティングの結果 - 監督官の点検・是正措置の履行確認書 |
5. 労災損害賠償 | 責任の認定・合意時の留意事項

事業主は、損害賠償責任のほかにも、産業安全保健法違反時の刑事処罰、重大災害処罰法などを同時に適用されることがある。
例えば、死亡事故が発生すると、作業中止命令、監督調査、検察送致が併せて進められる。
この過程で追加の違反事項が摘発されれば、罰金だけでなく、代表者個人に懲役刑が宣告されることがある。
のみならず、重大産業災害(死亡者1名以上、同一事故の負傷者2名以上、同一の有害要因による職業性疾病者3名以上)が発生した場合、懲罰的損害賠償が適用され、損害賠償額は最大5倍まで範囲が広がる。
特に、一部の事業場では、事故後に‘公傷処理’や‘慰労金の支給’のみで紛争を収めようとする場合がある。
しかし、これはかえって今後の刑事処罰のリスクを高めることになる。
労働者側に‘労災申請をしない’旨の条項を入れて合意書を作成した場合、後に労災隠蔽と誤解される可能性が高い。
合意は必ず法律相談を経て進め、適法な合意書の作成が欠かせない。
事業主の労災事故予防チェックリスト
労災事故は予防が最善である。
ただし、不慮の事故が発生した場合、事業主は直ちに次の事項を履行する必要がある。
労災損害賠償の被告側では、安全保健措置を全面的に履行しており、事故は不可抗力による要因であったことなどを主張して防御の論理を展開することができる。
この場合、証拠調査の専門要員と労務士、重大災害専門弁護士および民事専門弁護士などの支援を受ければ、迅速な証拠収集と、勤労基準法、産業安全保健法などに基づく防御体系の構築が可能となる。
労災損害賠償を請求された場合、法律相談をお寄せいただければ、週末や祝日を問わず重大災害専門弁護士が対応する。










