CONTENTS
- 1. 関税調査 | 調査対応の重要性

- - 関税調査 | 手続
- 2. 関税調査 | 調査の概要と調査類型

- - 対象選定基準
- - 主要な調査分野
- 3. 関税調査 | 調査手続および方法

- - 関税調査の最大期間
- - 関税調査の代表的な方法
- - 調査に伴う準備資料の一覧
- - 調査の終了および不服手続
- - 通告処分
- 4. 関税調査 | 納税者の権利保護と強制措置

- - 権利保護を要請できる分野
- - 強制措置の可能性
- 5. 関税調査 | 対象企業のための実務上の助言

1. 関税調査 | 調査対応の重要性

関税調査は、関税の課税標準額と税額の決定、更正のために納税者の帳簿と書類、物件を調査する手続である。
税関が納税者の関税関連業務全般を点検し、違法行為を摘発して課税漏れ、虚偽申告などを是正することになる。
訪問または書面で行われ、司法警察権を行使し得る税関職員が任意捜査、勾留状の請求、捜索・差押えや現行犯逮捕など強制捜査まで行うことになる。
輸出入活動は国家経済の重要な軸を担い、こうした活動には必ず関税に関連する様々な法令と手続が伴う。
国際貿易秩序の維持と国内産業保護の手段であり、国家財政に大きな影響を及ぼす段階であるため、輸出入企業の立場では関税法令を正確に履行し、各種申告事項を忠実に遵守することが望ましい。
関税調査 | 手続
関税庁は輸出入業者の通関の適正性、適法性を確認するために関税調査を行います。
▶定期関税調査の対象
直近4年以上関税調査を受けていない場合
▶非定期関税調査の対象
具体的な脱税の通報がある場合
関税申告の内容に誤りの疑いを認めるに足る資料がある場合
関税調査は以下の手続に従って進められます。
2. 関税調査 | 調査の概要と調査類型
関税調査は、「関税法」に基づき関税庁所属の税関職員が輸出入者または納税者の会計帳簿、税金計算書、原産地証明資料、外国為替取引の内訳など様々な書類および実物を直接調査し、課税標準および税額が適正に申告されたか否かを確認する行政手続である。
単なる事後検証とは区別され、通常の書類検討を超える訪問調査、書面調査、簡易調査など様々な形態で行われ得る。
特に、 2024年からは税関の負担を軽減し、誠実な企業の負担も軽減するための簡易調査制度が導入された。
従来の定期調査および非定期調査と区別され、調査が必要な水準ではあるが比較的リスクが低い企業を対象とし、書面中心または短期の訪問調査を通じて必要な釈明を受けて終える手続である。
簡易調査制度の新設により、リスクが低い企業の場合、関税調査の期間と提出資料の範囲が大幅に縮小される利点がある。
対象選定基準
次のような基準を総合的に考慮して対象が選定される。
定期調査
- 定期的な誠実度分析の結果、不誠実の疑い
- 直近 4年以上調査を受けておらず検証の必要性
- 無作為抽出方式による標本調査
非定期調査
- 申告、申請、課税価格決定資料の提出など納税協力義務の不履行
- 輸出入業者に関する具体的な脱税の通報
- 申告内容に脱税、誤りの疑いを認める資料の発見
- 納税者が税関職員に金品を提供およびあっせん
類型 | 内容 |
関税調査(旧 企業審査) | 関税の課税標準と税額の決定、更正のための訪問、書面により納税者の帳簿と書類、物件を調査すること |
定期関税調査(旧 法人審査) | 定期選定の方法で選定された関税調査対象業者に対する通関適法性調査 |
非定期関税調査(旧 企画審査) | 定期選定以外の方法で選定された関税調査対象業者に対する通関適法性調査 |
簡易調査(新設) | 関税調査対象に選定された業者のうち、関税行政への協力度、誠実度、過去の関税調査歴などを考慮してリスクが低い業者を対象に、釈明資料の要求、検証、訪問調査の期間を 10日以内に縮小して実施し、留意事項を案内および助言する関税調査 |
※ 従来運用されていた「企業審査の運営に関する訓令」が「関税調査の運営に関する訓令」に改正(2024.01.01)
主要な調査分野
- 課税価格の適正性: 正常取引価格の適用、特殊関係の有無など
- 品目分類および税率の適用: HSコードの誤り、高税率品目の脱漏の有無
- 許可・承認・条件賦課の有無: 輸入禁止または制限品目の点検
- 数量・重量・規格の適正性
- 関税の減免・免除申請の適法性
- FTA 原産地証明書および事後検証への対応の有無
- 付加価値税など内国税の精算の適正性
- 保税区域の運営実態
- 外国為替取引関連法令の遵守の有無
- 知的財産権侵害の可能性
- 還付金の不当受領の有無
3. 関税調査 | 調査手続および方法
関税調査は、徹底した手続的正当性に基づいて行われる。
税関はまず 調査開始の 20日前までに関税調査事前通知書を納税者に送付しなければならず、この通知書には調査対象期間、調査分野、提出資料の目録、調査期間、清廉協約書など必要な情報が含まれる。
これは再調査の際も同様である。

関税調査の最大期間
調査期間は、法令により最大期間が定められている。
- 一般調査期間 : 90日
- 簡易調査期間 : 10日
- 再調査期間 : 60日
- 必要時の延長 : 120日~180日
- 調査期間の延長 : 20日
訪問調査の場合、実質的な訪問は 20日以内とし、中小企業の場合には 10日以内に調整することができる。
[調査期間延長の主な事由]
関税調査の代表的な方法

関税調査は通常、訪問調査と書面調査に分けられる。
原則は訪問調査であるが、企業のリスク度合いと事案の複雑性に応じて方法が決定される。
- 書面調査 : 税関事務所で書類、帳簿を検討
- 訪問調査 : 税関職員が直接企業を訪問
-帳簿と電算資料の検討
-担当者と面談する形態
書面調査は、提出された資料のみで十分な説明が可能であり、調査の複雑性が低い場合に適用される。
ただし、書面調査で解明されない事案が確認された場合、訪問調査または統合調査に変更されることもある。
資料の誠実性と回答の正確性に応じて調査の強度が変わる点に留意する必要がある。
調査に伴う準備資料の一覧
対象企業は、当該関税調査の通知を受けた日から 10日以内に資料を準備し、税関長に提出すればよい。
会社紹介関連 | 会社説明資料、経営組織図、輸出入取引品目、国内の仕入・売上資料など |
貿易手続関連 | 貿易業務プロセス、目録通関物品の説明資料など |
輸出入申告・取引資料 | 輸出入申告済証、送り状(インボイス)、見積送り状、輸出入取引契約書リスト |
外国為替取引資料 | 外国為替取引の内訳、資本取引申告書、海外直接投資等の申告書、 |
会計・税務資料 | ERP データフロー図、監査報告書、決算報告書、事業報告書、総勘定元帳、仕入帳、棚卸資産出納簿など |
課税価格関連 | 輸入物品の取引契約書、価格資料、費用支払内訳、ロイヤルティおよび手数料、生産支援等の契約書 |
特殊関係取引関連 | 特殊関係者間の相互出資状況、輸入物品の価格算出内訳、移転価格分析報告書、国税庁申告書など |
関税減免資料 | 減免申請物品のカタログ等の説明資料、減免申請書の事後管理台帳 |
通関要件・関税還付資料 | 輸出入公告、製品の生産計画および作業指示書、還付申請書など |
原産地関連 | 原産地協定税率の適用に関する資料 |
品目分類関連 | 品目分類事前審査の確認内訳、取扱製品の物品説明書、品目分類の根拠資料など |
調査の終了および不服手続
関税調査が終了した後、評価会議を経て納税者の意見を聴取し、その結果を通知し、不足する税額を徴収し、または関税犯を処理することとなる。
この場合、納税者は課税前適否審査、異議申立て、審査請求、審判請求など、段階別の不服手続を活用することができる。
審判請求の後にも不服がある場合には、 90日以内に行政訴訟を提起することができ、この場合には行政裁判所に訴訟を提起することとなる。
不服手続のために、権利侵害、不当な課税および徴収に対する対応資料を整理しておくことが必要である。
通告処分
税関の通告処分は、比較的軽微と考えられる関税法違反の事案について、罰金に相当する金額、没収物品、追徴金に該当する金額を納付するよう通告する行政行為である。
この場合、犯罪経歴(前科)には該当しない。
通告処分について罰金を納付し、または履行した場合は裁判所の確定判決と同一であり、通告処分を履行しない場合は検察への告発など、刑事訴訟手続へと進む。
4. 関税調査 | 納税者の権利保護と強制措置

関税調査において、納税者の権利は法的に保障されている。
税関は調査の開始前に必ず納税者権利憲章を説明し交付しなければならず、納税者はこれに基づき、調査範囲の拡大制限、中止の要請、代理人の同席の権利などを保障される。
また、調査対象の期間や分野、対象品目などを拡大する必要がある場合には、調査期間の終了 3日前までに納税者保護担当官の事前承認が必要となる。
権利保護を要請できる分野
税関長の処分が完了する前の事項のうち、関税行政の執行または執行予定の過程で税関職員が裁量を濫用し、または権利が不当に侵害される場合、納税者保護担当官に権利保護を要請することができる。
- 関税調査範囲の拡大承認
- 関税調査期間の延長・一時中止の要請
- 帳簿等の一時保管期間の延長
- 修正輸入税金計算書の未発給決定・発給の可否など
ただし、犯則調査や外国為替調査、外国為替検査の事項などに対する保護要請は、納税者保護担当官の業務ではない。
強制措置の可能性
関税調査は行政手続で終わらず、強制力を伴う場合がある準司法的な調査である。
正当な理由なく資料の提出を拒否する場合、過料の賦課および押収措置が可能であり、関税法など法令違反の事項が明白であるか、税関職員の質問に対して虚偽の陳述などを行う場合には、犯則予備調査に転換され、刑事告発または罰金刑などの処分が下される場合がある。
また、必要に応じて金融口座情報の要求、保税倉庫の物品搬出禁止命令、外国為替検証のための第三者資料の要求など、強制手段が用いられる場合がある。
企業の立場では、留意し防御すべき部分である。
[代表的な法令違反行為]
5. 関税調査 | 対象企業のための実務上の助言
関税調査が始まる前に、納税者側は調査に対応するための内部対応チームを構成しておくことが望ましい。
関税弁護士または関税士とともに対応方針を策定することが望ましい。
調査開始日には、調査要員が納税者の事業所を訪問し、または書面資料を受領した後、調査範囲に応じて実地調査または分析を行うため、正当な理由がある場合には調査の中断や延期を要請することができる。
場合によっては資料提出期限の延長も可能であるが、正当な理由なく資料提出を遅延させ、または拒否する場合、過料の賦課および調査期間の延長など不利益が生じる場合があるため、専門家の助言のもとで対応することが望ましい。
関税調査では、税関職員の調査への対応よりも、事前準備のためのリスク管理がより重要となる。
当法人の関税弁護士および関税専門委員 TFは、次のような戦略を策定して対応することができる。
• 直近 5年間の輸入申告・FTA 原産地証明・減免内訳の資料の検討
• 会計、通関、原産地部署など、内部 TF の構成の支援
• 関税調査時の関税弁護士および関税専門委員の立会い
• 関税調査の早期終結が可能な通告処分の検討
• 税関による追徴関税への不服請求の後続対応
• 検察送致時に、調査に対応した弁護士が事件を連携して進行










